新経済連盟初の関西イベント「KANSAI SUMMIT 2016」開催レポート<中編: Session 2>


   
   
      
新経済連盟にとって関西で初の大型イベント「KANSAI SUMMIT 2016」を、2016年9月6日(火)に大阪・梅田にて開催しました。このイベントは、本年から当連盟が近畿・関西圏で本格的に活動を展開する、そのキックオフとなるものです。近畿・関西を中心に全国から400名の方々が参加され、カンファレンスと懇親会の二部構成の本イベントを楽しまれました。
   
新経連の初お披露目でもある今回は、登壇者を近畿・関西に縁を持つ当連盟幹部・会員で揃え、司会も関西弁、という「関西づくし」。会場は開会直後から満席で、第一線を走るアントレプレナーたちがぶつかるライブなパネルディスカッションは、最初から最後まで熱く盛り上がりました。その様子を3回に分けてレポートします。
   
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「KANSAI SUMMIT 2016」開催レポート

   


   
中編: Session 2>
   
   
■ Session 2:KANSAIの底力と未来
   
新経連初の試みである、“関西における関西人による関西についての関西のための”セッション。登壇するのは、新進気鋭の関西発ベンチャーで新経連会員でもある、akippa、フリープラス、ロックオンのトップ3人。対するモデレーターは、先輩起業家である新経連幹事、岡本泰彦氏(ジェイコムホールディングス株式会社 代表取締役社長)です。これら4人の関西アントレプレナーたちが語る、起業と成長、成功に対する強いこだわりと熱い想いを通して、関西の底力と可能性が見えてきます。  
   
   
起業は怖くなかったのか
   
駐車場予約サービスを提供するakippa株式会社 代表取締役社長の金谷元気氏は、全く怖さを感じなかったと話します。高校卒業からプロサッカー選手を目指していた金谷氏は22歳で現役を引退してビジネスに転向し、24歳でakippaを創業。それまで学問のような形で積み上げたものがなかった分、怖いと感じることもなく、サッカーで培った強い精神力で、自分がやったらきっと世界一になれるという漠然とした自信があったと語りました。
   
   
訪日旅行(インバウンド)に特化した旅行会社の株式会社フリープラス 代表取締役社長の須田健太郎氏も「全然怖くなかった」と断言します。「一度しかない人生で凡人として終わるのは嫌だ」と、20歳で大学を中退。一人では何もできないが、起業して優秀な人材を集め、世界企業に育てて世に残したいという強い想いから起業に至りました。イノベーションと言えばITと思われがちですが、須田氏は「リアルど真ん中」のビジネスで今までなかったことをやる、そういうイノベーションにこだわっていると言います。 
   
   
一方で、株式会社ロックオン 代表取締役社長の岩田進氏は「怖かった」と言います。マーケティングソリューションを提供するIT企業のロックオンを大学在学中に起業する前、岩田氏は大阪の堺市でオムライス屋を経営していました。まだ学生で右も左もわからず、結局オムライス屋は失敗。それは若い岩田氏にとって恐怖体験であると同時にロックオンの創業につながる大きなラーニングの体験でもありました。  
   
   
失敗から何を学んだか
   
岩田氏がオムライス屋の経験から学んだのは「ビジネスは競争したら負け」ということ。コンペにならないような状況で勝負してナンバーワン、オンリーワンになり、そこで利幅を取って再投資に回す収益モデルでないと儲からない、それにはITのような新しい産業が適している、と20歳の時に気づいたことが人生の転機になったと岩田氏は振り返りました。
   
金谷氏は失敗から経営理念の大切さを学んだと言います。起業してからビジョンを持たずに売上追求型の経営を続けて5年目で行き詰り、「何のために会社をやっているのか」と思い悩みました。そこから「世の中に必要不可欠なサービスを作りたい」という想いに行き当たり、「“なくてはならぬ”をつくる」という経営理念ができた、その理念を全社員で共有したことで、将来性のある会社になったと感じると金谷氏は語りました。
   
関西にいることのメリットと課題は 
   
メリットとして4人が挙げたのは、コストパフォーマンスの良さと優秀な人材の採用のしやすさでした。東京と比べてオフィス賃料が安く、より良いオフィス環境を整えられる、家賃も安いため社員がオフィスの近くに住め、トータル的にコストが抑えられるというコスパの良さ。また、採用面では、まず関西に本社を構えることで、レベルの高い大学の多い関西圏の優秀な学生を新卒で取りやすいこと、そして、近年東京のメガベンチャー出身の優秀な人材がUターンで関西に戻るケースが増えており、そういう人材を中途採用しやすくなっていることもメリットだそうです。 
   
デメリットは、東京と比べて情報が少ないこと。それによって上場がものすごく遠いところにあるという先入観が生まれ、自ら限界を作ってしまう経営者も少なくありません。資金調達も関西だと困難と思われがちですが、金谷氏は地理的なハードルは感じず、関西はスタートアップが少ないため目立って逆に有利と話します。
   
岡本幹事は上場時に先輩たちにアドバイスをもらったエピソードに触れ、新経連として、情報提供や経営者のコミュニティ作りを進めていきたいと話し、また岩田氏も、自らの上場経験を後輩に伝えて還元していく役割が自分にはある、情報共有しながら仲間を増やしていくことが関西では重要と語りました。 
   
   
関西の底力、そしてこれから
   
売上高のほとんどが海外市場からというフリープラス。既に視点がグローバルに向いている須田氏は、東京に行くメリットは感じないと言い切ります。人口が減り将来確実に縮小する日本市場。シリコンバレーで事業をスタートさせている岩田氏も、日本企業はもはやグローバルで闘う以外に道はなく、その観点では東京も大阪もスタート地点は一緒と強調します。その上で、これから海外にどういう価値を提供できるのかが問われる時代が来る、さまざまな産業や文化が集積している関西は、日本のビジネスにとって重要なプラットフォームとなるだろうと示唆しました。 
   
カンファレンス冒頭の開会挨拶で松田理事が述べた、関西人が持つ「商人魂」と「ダメでもともと」のチャレンジ精神。この4人の潔いほどの前向きさと強さは、まさにそれらを体現しているように感じます。
   
少子高齢化、人口流出が急速に進む関西圏。 岩田氏は社会課題のないところに起業は生まれない、これを逆にビジネスチャンスととらえ、どこよりも先駆けてイノベーティブなプロダクト・サービスを作って世界に広げるべきと強調します。多様な産業の集積地、関西。道のりは平坦ではないのかもしれません。しかし、多様なプレイヤーがいるからこそ生まれるイノベーションがある、課題は解決にたどり着くための道程であり、関西にとっての「ジャーニー」はこれからだ、そう予感させられたセッションでした。
      
   
   
   
   
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