法務省が意見募集している「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に関して、意見を提出しました。

「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に関する意見募集

(P47・48 「第26 契約に関する基本原則等」関係)

1.付随義務及び保護義務を新たに規定化する案が提示されているが、反対である。

(理由)
付随義務及び保護義務という高度に抽象的な概念のあてはめについては、事案の内容ごとに個別に判断されるべきものであり、規定化する理由がない。あいまいな規定は、かえって正当な経済活動の過度な委縮につながるおそれもあり、適切でない。

2.信義則等の適用に当たっての考慮要素を規定する案であるが、規定化することは不要と考える。

(理由)
信義則等の抽象規定の適用に当たっては、事案の内容ごとに個別に判断されるべきものであり、「情報の質及び量並びに交渉力の格差の存在」のみをことさら取り出して規定化する理由はないと考える。また、インターネット等の普及により、消費者は比較サイトを活用するどしており、消費者と事業者の間に格差があることを必ず前提とすることにも疑義がある。

(P48 「第27 契約交渉段階」関係)

3.契約締結過程における情報提供義務を規定化するとのことであるが、反対である。

(理由)
個々の契約締結過程において従来の通り信義則等の一般原則を適用しながらケースバイケースで柔軟に解決することで対応できるものであって、規定化する理由はない。

(P51・52 「第30 約款」関係)

4.現状の約款の規定化の提案の具体的文言(組み入れ要件の具体的な条件、不意打ち条項をいれていること、約款の変更の具体的な条件、不当条項規制を入れていること)が不適切であり、この提案に基づく約款の規定化(第30の項目全体)に反対である。

(理由)
約款によるサービスは一定の条件によるサービスの利用を前提として提供されるものであり、その状況が経済取引として定着している中で、約款の内容を知ることができる機会を確保するほかに、「契約に約款を用いることを合意する」ことまで必要とすることには疑義がある。
また、環境の変化やイノベーションに対応して利用条件を変更することが不可避であり、柔軟な変更により、事業者や消費者に利便性の高いサービスを提供し続けることが可能となる。その意味で、約款の変更の条件として示されたものが現状の取引実態に比べて過度な負担を強いることになるのかどうか等を十分に見極める必要がある。
さらに、不意打ち条項や不当条項の規定化が提案されているが、すでに消費者契約法や独占禁止法等の枠組みが構築されており、取引の一般法である民法に定めるべき理由はなく、あいまいな条項による濫用の危険もある。

(P53 「第32 事情変更の法理及び第33 不安の抗弁権」関係)

5.事情変更の法理及び不安の抗弁権を規定化することには反対である。

(理由)
個別事情に基づき総合的に判断されるべき問題であり、この考え方は一般規定を置くほど内容や要件は熟しておらず、かえって濫用の危険がある。

(P53 「第34 継続的契約」関係)

6.契約更新のみなし規定が提案されているが、反対である。

(理由)
契約に期間が定められている以上その期間満了をもって契約を終了するのが前提であり、更新のみなし規定を入れる合理的な理由はない。かえって不要な混乱をもたらすだけである。

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